秋の自転車旅2010 四日目、只見ー小出

昨晩の男性も同じく小出方面に行くとのこと。お互いに一人で走っている訳だし特別に一緒に走りましょうということもなく阿吽の呼吸でほぼ同時期にすこし時差をもって出発。

事前にいろいろな方のブログを調べると田子倉駅と只見駅の間にあるトンネルは漆黒で自転車で入るには「相当の覚悟」がいる、とあった。確かに地図をみるとこれから先にはいくつかのトンネルがある。その昔、実際は6里ある峠がその急峻さ、困難さから60里に思えるということでここ福島側から新潟側に抜ける峠は六十里越と呼ばれている。この道路を整備したのが田中角栄。途中に記念碑があった。宿の主人に聞いても福島側のトンネルには照明はない、新潟側になると照明がある、とのこと。この漆黒のトンネルをスキップするために只見からとなりの田子倉までを輪行することも検討したが思い切って走りきることにした。

ゆっくりと登り始めるとすぐに田子倉湖のダム上に到着。あの漆黒のトンネルはこの先か、と少し緊張しながらいつになったらそのトンネルに遭遇するか走った。が、結局それらしいトンネルはなかった。スノーシェッドッドと呼ばれる雪よけと小さなトンネルはいくつかあったが漆黒のトンネルはなかった。あっけなく田子倉駅に到着。あれっ、という感じだった。田子倉駅は冬季は閉鎖。工事関係者が使うだけの駅のようだ。何しろ周辺には民家はおろかなんの施設もない。その田子倉駅を見渡す場所で20分ほど列車が来るのを待った。平日4往復の列車なので次は4時間後になるのでのんびりと待ってみた。

  

首尾よく写真を撮ってからいよいよ六十里越えが始まった。しかしながら意外と傾斜はゆるい。途中、田中角栄の記念碑がある場所、いろいろな場所で田子倉湖、その周辺の山々を眺めた。あの山々で紅葉が始まったどんな世界がみられるのだろう。

途中、比較的長いトンネルがあった。照明なし。ここがその漆黒のトンネルか、と意気込んで飛び込んでみた。田子倉駅近辺からは先ほどの彼氏と一緒に走ってきたのでこのトンネルも私が先頭になって二人で走り始めた。確かに照明はなく暗い。ただ、遠くに出口の明かりがかすかに見える。一安心。ブログにはこの出口も見えないと書いてあった。反対方向から見たのかもしれない。薄明りの中、自転車のライトがさす明るい場所だけを見ながら進んだ。目がなれたせいか意外と明るく漆黒というほどではない。400mほどのトンネルはほどなく通り過ぎた。出口でほっとした。

さらに登り続けると六十里越隧道と思えるトンネルに到着。ここは2Kmの長さ、さすがに照明があった。安心して通過。ここからは小出まで252の下りが延々と40km近く続く。

途中の無人駅、道の駅で休憩しながら快適に飛ばした。なにしろ下り基調なので楽に30Kmオーバー。同行の彼は小出の手前で山古志村方面に向かった。アッという間に小出に到着。11:30。終わった。

パッキングしてから着替えて駅前の食堂でランチ。おかみさんのお喋りとおでんを肴にビールを一本。洋風の食事を欲していたのでスパゲッティも賞味。それなりに田舎の味でした。

秋の自転車旅2010 三日目、銀山平ー小出ー只見

夜中に雨音で目が覚めた。近くには沢はないので沢の音ではないはず、ところが波が押し寄せるように時々ザーという音がした。雨だ。今日も雨か。と落胆。ベッドの中でじっと夜が明けるのを待った。明るくなって外をみると案の定、しっかりとした雨が降っている。いろいろと対策を考えた。今週は休みなのでもう一日ここに逗留する、この施設の車で小出まで送ってもらう、サポートカーに乗る、などなど。同宿の方々とも同じようなことを話していた。

ところが、朝食の後でガイド氏が参加者に聞くとほぼ全員がこのまま走って帰る、と意志表示。昨日の雨ですっかりと雨と仲良しになってしまったらしい。数人はサポートカーに乗ることになったが他は予定通り。

そうこうして出発の準備を始めるとなんと雨が上がってきた。

一旦は着けた雨具を再びしまって出発。今日でツアーは終わる。ツアーは小出から浦佐に出て越後湯沢で解散の予定。私は小出で皆さんと別れて別行動の予定。ツアー最終日の朝はそれぞれ記念の写真を取り合った。

出発するとすぐに枝折峠への登りが始まる。登るにつれて昨晩宿泊した銀山平が一望できるようになった。(写真左) 山の緑にかこまれた小さな盆地状のここはログハウスと合間ってチロルみたいだ。ちなみにここは雪のために年の半分しか営業できないそうだ。枝折峠までは260mの登り。ゆっくりと景色を見物しながら名残惜しみながら登った。
    
ほどなくして枝折峠。小出から上ってきたローディーが二人いた。小出からだと25Km,900mの登りになる。直下は15%位のところもあった。

枝折峠で休憩後は352をひたすら下る。慎重に下る。このころは青空になった。雄大な山々を見ながら25kmほど快適な下りを楽しんで小出の道の駅「ゆのたに」で昼食。

ここでツアーから離脱。皆さんとは別れを惜しんで一人で小出駅に向かった。

小出駅からはこれも楽しみにしていた只見線。別に鉄道マニアではないが乗ってみたかった。13:17発の会津若松行。2輌編成のジーゼル車。小出駅で輪行バックをかかえた男性と遭遇。彼は山形からきて同じ会津地域を走って帰る途中とか。同じ席に座ってしばし歓談しながら車窓を眺めていた。

只見線沿線はまだ紅葉は始まってない。ここは2年前の同じころに山岳会OBと一緒に車で走ったことがある。あの時は浅草岳を目指したが雨で断念した。会津での経験は雨が多い。

今夜の宿は只見駅前にある民宿を予約してある。その只見を通り越して会津大塩で下車した。周囲は畑。その畑の中にホームと掘立小屋のような駅舎があるだけ。もちろん無人。こんなところで自転車のメカトラブルがあったら大事になる。そんな思いで少し不安になりながら自転車を組み立てて走り始めた。今度は電車とは逆方向で只見駅に国道252を戻った。

    

252は只見線に沿って会津と小出を結んでいる。走り始めてすぐに感じた。これはいい。もちろん交通量は非常に少ない。時々集落が現れる。常に只見川が並行している。この只見川は広くゆったりと流れている。人工物は少しの民家のみ。目障りな看板は皆無。実にのどかだ。川の流れはゆったりとして周辺の景色が水面にきれいに映っている。(写真中央) 通り過ぎるのを惜しむかのようにゆっくりと走った。途中、会津のマッターホルンと呼ばれる蒲生岳も眼前に見えた。前回、浅草岳登山に来たときはこの蒲生岳には登れた。(写真右)

まだ明るい4時過ぎに宿に到着。

夕食時には会津田島からまっすぐに289を走ってきたという男性と同席した。自転車ツアーのことでいろいろと盛り上がった夕食になった。会津の地酒も賞味。

秋の自転車旅2010 二日目、桧枝岐ー銀山平

夜が明けて窓を開けると雨は上がっていた。山間部は雲の動きが早い。観天望気で天候は回復する、とはガイドの予報。皆が準備している間に、昨日見られなかった桧枝岐歌舞伎の舞台を見に行ってみた。重要文化財に指定されている舞台は意外と小さい。それを見下ろすように半円形の見物席が山の斜面を利用して階段状に4段ほど作られている。背後には大きな杉の木立。凛とした雰囲気が感じられる.

今日の目的地は75Km先の銀山平。宿からはすぐに登りが始まり11Km、600mを上がると御池になる。ここは1525m。この高さになると紅葉が始まっていた。この一帯は北上山地とくらべられる「ぶな」の林になっている。しずかな国道をゆっくりとお喋りしながら紅葉の中を登った。何回となく立ち止まっては写真撮影。まだ緑が残っているがそれも色のひとつ。こうした数々の色をした紅葉は日本でしか見られないかもしれない。北米でも紅葉はするが色の数はもっと少ないような気がする。「ぶな平」を過ぎると御池。ここは尾瀬への登り口のひとつ。多くは南側の大清水から入るがここも立派な登山者用の施設がある。

御池からその奥の沼山峠までは一般車は侵入禁止。登山者はバスで峠まで入る。自転車は通行可能なので我々は沼山峠まで片道9Kmを往復した。1700m。さすがに紅葉が進んでいる。思わず歓声をあげながら何回も立ち止まって見物、写真撮影。

    

沼山峠から再び御池に入り進み始めたころから再び雨。しまってあった雨具を再びつけて352をどんどんと下った。雨で路面が滑りやすいので慎重に走った。下りの途中にある「山の中」というレストランで昼食。まさに山の中に突如あらわれた感じのレストラン。40cmくらいある大きな天然マイタケが5000円で売られていた。そこでまいたけ汁定食を賞味。(写真右)

昼食後も相変わらず雨は降る。でも弱くそれほど苦にならない。雨の中を走る機会は少ないがアウトドアの活動をする限りは当然あり得る。素直に受け入れていける。雨具がしっかりとしているので外からはあまり濡れない。それよりも内部からの汗で濡れてしまうことのほうが多いので着衣の調整でなんとかなる。

昼食のレストランから今夜の宿泊地、銀山平までは約40km。しばらく下ると奥只見湖が見えてきた。ここまで下ると木々はまだ緑。その代り雄大な湖と山容が楽しめる。

この辺から再びアップダウンが激しくなった。湖の入り江に沿って道がうねっている。沢筋に入ると下り、そして登り返す。私は4、5人の先頭集団に入ってかなりハイになって走った。香港からきている若者が必至の思いでトップを追う。私は先頭集団の中では最後尾。これが精一杯。このころは雨脚が強くなった。波のように時々強い雨が降り注ぐ。沢筋から流れる水が道路を横切る。そこは川のようになっている。高速で水しぶきをあげながら走り去る。強い雨の波が来るごとに皆嬌声をあげる。なんともテンションが高い。100m位の登り返しが3つ。そのピーク毎に後続者を待つ。そのピークには名前があるらしい。その一つが「恋の岐乗越」。どんな由来があるのやら。

 

    

ようやくの思いで銀山平のログハウス群に到着。周辺には何も施設がないがここにも温泉がある。着いた頃は雨が上がって夕食のころには星も見られた。
  
本日の走行75Km.でもそれ以上に濃い一日だった。

秋の自転車旅2010 一日目、会津ー桧枝岐

毎年、春と秋にはロングライドをするのが恒例になってきた感じがする。昨年の春はCoast-To-Coastの本州横断、秋は能登半島、今年の春は北関東・南東北。で、今年の秋は題して「ザ・ディーペスト本州」。ツーリングガイドの丹羽隆さんが企画した会津、桧枝岐、銀山平のツアーに便乗。タイトルは丹羽さんの命名。通年で住んでいる人がいない地帯で日本では二番目に広い地域がこの辺、というのが彼の主張です。一番は北海道縦断ツアーで走ったことがある「朱鞠内湖」近辺とか。全国を走った彼が言うことなので本当なのかも知れない。
丹羽さんのツアーには9年ほど前から何回か参加してきた。参加者も皆リピータで今回の18人の参加者の中にも懐かしい顔も何人かいた。いつもすぐに和気あいあいとなるのがこうしたツアー。

長い日記になり恐縮です。自分の記録として残したかったし、いいコースなので興味がある方への情報提供ということでご容赦を。

10月9日

初日は自宅を早朝に出発して北千住から東武線の快速会津田島行きに乗車。6輌の列車はほぼ満員。すぐには座れなかったが乗り換えなしで目的地まで行けるので助かる。急行の類は指定席が売り切れで乗れなかった。10:40に集合場所である会津田島駅に着いた時にはすでにぽつぽつと雨模様。到着早々、北海道を一緒に走ったN氏と再会。嬉しかった。彼とは秩父、名栗をよく走ったものだ。

全員がそろった12時過ぎにしっかりと雨支度をして出発。

次の集合場所を目指して思い思いのスピードで289を走る。参加者の荷物を積んだサポートカーが最後尾を走る。雨は弱くそれほど気にならない。ただ、滑りやすい路面に注意して慎重に走った。快適な道で思わず先頭に飛び出して走ってしまった。16Km先の駒止トンネルが最初のピーク。ここまで400mの登り。

駒止トンネルの手前にある道の駅で集合。相変わらず雨は続く。でも、皆笑顔。これから続く長いトンネルを避けたい初心者はサポートカーでここをスキップ。2Kmのトンネルは明るく意外と安心して走れた。交通量が少ないので楽だ。

トンネルを出ると10Km位の下りが始まる。下って401に合流する手前にある道の駅で改めて集合。雨はだいぶ弱くなった。ガイド手製の焼リンゴとかコーヒーで体を温めた。何かとサービス精神が旺盛な方ですね。

山の中の351から352に入った。時々現れる集落は雪国であることを思わせる寒村の雰囲気。静かな山間の集落。時々集合して進むとようやく桧枝岐に入った。

桧枝岐は20代のころから訪れたいと思っていながら機会がなかった場所。越後からも会津からも遠く離れた場所にあり独特の文化が根付いている。村人が年に数回演じられる桧枝岐歌舞伎は260年におよぶ長い歴史があるらしい。そんな秘境というイメージで来たがさすがに今となっては秘境のイメージはなく現代の山間の村という感じになっていた少し残念。もうすこしひなびた茅葺の古い家並みを期待していたがみな新しい家になって立派な民宿も街道に沿って並んでいる。写真集を見ると1990年代頃までには古い建物は消えてしまったようだ。ちなみにこの地区に住む人たちの姓はほとんどが平野、橘、星だとか。

その一つである星さんの民宿「星の屋」に宿泊。今回のガイドがこの宿を気に入って自転車雑誌で紹介してからサイクリストが増えたとか。近くの温泉に浸かって半日の疲れを癒した。

この宿、食事が素晴らしかった。品数12品。それにご飯とみそ汁。地元の山菜、川魚を中心にした素朴な田舎料理そのもの。ぜんまいの天ぷらと一緒に山椒魚の天ぷらもあった。最後につなぎを一切使わない「裁ちそば」も出てきた。高級旅館で出てくるような高級食材は使ってないが実にいい味に出来上がっている。朝も同様に10品。いずれも完食しました。食後は宴会部屋でしばし歓談。

夜になっても雨は降り続いていた。