自転車ガイドを考える

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今年の3月から始めた自転車ガイド。これまでに午前、午後のコースを合わせて37回行った。この間にガイドした顧客は14カ国、108人。ガイドをする最大のモチベーションがこれだ。つまり毎回いろいろな外国の方と会って話をすることができる。そこに新しい出会いがあり発見がある。

自転車ガイドの2つの側面

自転車ガイドをすることはプレゼンをすることでもある

一回のガイドは約3時間。15~16Kmを走る。ガイドすると言うことはこの3時間を使ってこの16Kmのコースをプレゼンすることを意味すると思っている。3時間で何を訴えてそれをどのように伝えるかをいつも考えている。午前のコースと午後のコースは異なる。当然ながら途中で説明するポイントも異なる。こうした中でそれぞれのコースの特徴を自分なりに理解してそれぞれのコースで伝えたいことを考え出している。各コースはこのツアーを企画している旅行会社がベテラン自転車ガイドとともに作り上げたコースであり思いがあって作り上げたものでしょう。その思いは私が感じているものとは異なるかもしれない。それでも私はそのコースのコンセプトを自分なりに作り上げてそれを伝えようとしている。そしてそのコンセプトを伝えられるように説明し、時には拡大写真、地図、などを使っている。現在は説明の仕方、順番は毎回異なっていて試行中でもある。

自転車ツアーはプロジェクトである

同時に3時間のツアーはプロジェクトでもある。ガイドはこのプロジェクトを実行するプロジェクトリーダーでもある。つまり、自転車ガイドは3時間という限られた時間に予定されたコースを安全に回り時には突発的に発生する問題に対処する。顧客が体調不良になったり自転車の故障も起きる。ガイドはこうした問題に対処するわけだ。顧客および旅行会社と言ったステークホルダーとのコミュニケーションも重要な要素だ。ツアーの進行状況を伝えたり次に何を見るのかなど顧客を不安にさせないコミュニケーションが必要になる。こうしたツアー中の活動はまさに3時間のプロジェクトの中でのプロジェクトマネジメント活動であると考えている。

ガイド中の会話

自転車のガイド中は走っているため声が通らないのでいろいろな説明をするのが難しい。非常に静かで車が走っていない広い通りでは並走して話すこともあるがこれは非常に稀である。そこで顧客への説明はそれぞれのポイントで停車して行うことになる。そして信号待ちの時間も大事な時間である。こうした時間にどのような話をするかでガイドの内容、レベルが大きく異なってくる。

まずは冒頭で

ガイドを始める冒頭では、自分が考えるここのコースの特徴、顧客に何を見てほしいのかについて話すことが多い。

そして実際にツアーが始まると話の内容は3つある。

事実の説明

ひとつは、純粋に説明の対象である建物とか景色についての事実。つまり建築年代、それにまつわる歴史、背景を説明する。これは一般的にガイドに要求される最低レベルでしょう。

日本社会のこと

そして日本全体に関わる事項の紹介も大事だ。日本社会の現状、日本人の生活状況、政治、経済など一般的な内容も話す場合もある。この辺は顧客からの質問をきっかけに説明することが多い。

個人的な話

そして最後に自分自身のこと。どのような仕事をしてきたのかどんな趣味を持っているのかどのような所を旅してきたのか、、、、こうしたことを話をすることも多い。こうした個人的な内容は顧客から話を引き出すきっかけになったりする。そうすると顧客も個人的なことを話してくれる。こうした個人的な話をお互いにすることで気持が通じあることが多い。楽しく嬉しい瞬間だ。

大事にしていること

この中で二番目の日本全体に関わる話に力を入れている。それは昨年のミャンマーとカンボジア旅行でガイドを利用した時の経験からきている。自分一人で見て回っていると現地の人との会話は非常に限られる。つまり現地で英語を話す人が少ない。結果的に単に見て回るだけで視覚からの情報を得るだけになる。時々出会う海外からの旅行者と情報交換するのが関の山だ。その旅行者も現地の情報については限られている。その国の社会全体のこと、現地の人がどのような生活をしているのか、というようなことはガイドを雇うことで初めて知ることができた。ガイドを雇うことはそれなりにコストがかかるがその価値は十分にあった。つまりガイドを雇うことはその国のことを聞き出す貴重な機会である。最初に挙げたような、説明する対象についての年代とか背景などの説明も重要だがそれ以上にその国のこと、社会のことを聞けたことが非常に良かった。

この経験から自転車ガイドをしている中で日本全体のことをできるだけ説明するようにしている。説明の対象が何年に建造されたのか、云々のことはすぐに忘れると思う。それよりも日本人が何を考えていてどのような生活をしているのか、、、のほうが心に残るのではないか、と思っている。

こうしたことを通じて顧客がプレゼンの内容に満足し安全に時間通りにツアーが終わった時、そして顧客と気持ちが通じ合ったと思えるようなツアーが終わった時、ガイドをしてよかったと思う。こんな瞬間が一度でも多くなるようにいろいろと進め方を工夫していきたい。

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