「民俗学の旅」宮本常一

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これで5冊目かな。民俗学者宮本常一の本。

これは晩年になってからかかれた自伝のような作品。明治40年に山口県の農家にうまれてから70歳までの軌跡と民俗学にたいする考え方がかかれている。

貧しい農家に生まれて満足な教育もうけられずにたが師範学校に行くことが出来て東京、大阪に職をえることができた。それでも若いころは結核になるなど病気との戦いの連続だった。

中学校の教師となったり郵便局員になったりしながらも民俗学の大家である柳田国男や元大蔵大臣で民俗学に造詣が深く学者に対してはスポンサー的な立場だった渋沢敬三を師とすることができた。

日本全国をくまなく歩き農村漁村をおとずれてはその土地の歴史、暮らしぶりを見たり聞いたりして記録をとった。若い頃に大病をしたとは思えないくらい歩いてきた。その土地をおとずれるとそこに暮らす人々とは夜が開けるまで話込み交流した。見ず知らずの土地の方々に受け入れられているのはこの方の人格なのでしょう。その土地土地で知り合った方の家に宿泊させてもらっている。いまではなかなか出来ないことだ。

民俗学という学問は体験の学問であり、実践の学問であると思っているが、、、、」とあるが彼は各地の文化を調べて記録するだけの学者ではなかった。その土地々々の発展を望みそのために応援してきた。農業、漁業、林業と幅広く地方の発展のために努力してきた。ときには政治家、官僚をとおして地方の発展のための施策を作るのにも貢献してきた。学者という立場を越えて彼の持つ知識を地方の発展のために生かしてきた。

彼は地方をくまなく歩きその土地の実情を調べてそれをまとめ上げて報告することで行政を動かしてきた。こうして地方の発展に貢献してきたことをおおいに讃えたい。私も彼のように辺境の地までも歩いてその土地の風習、文化を知りたいと思う。私の退職後に進めている「くるま旅」で各地を旅することはこうした欲望の現れかと思う。しかしながら彼はこうしたことを通して地方に貢献している。現在の私は単に実情を知ることだけだ。なんとも恥ずかしくなる思いがする。とはいえ現在の私は晩年を楽しむために地方を回っているしこれからも回りたい。いやいや、私は彼とは別な方面で世の中に貢献してきた、と自分に言い聞かせるだけです。

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