豊島（てしま）ラン
四国に通うようになって瀬戸内の島々を訪れるのがテーマになっているが今回は豊島（てしま）。
ここは１９７０代初めに大量の産業廃棄物で社会問題になったところ。あれから５０年近くが経過し最近になってようやくほぼ解決したようだ。当時は島の西側に産業廃棄物が投棄されていたがその殆どは隣りにある直島に運搬しそこの処理施設で処理が進んでいるようだ。現在は豊島には当時の廃棄物は残っていない。ただ、直島に運んだ廃棄物はまだ１０年かけて最終処理をするらしい。半世紀に及ぶ大事業になった。
そんな豊島は瀬戸内国際芸術祭の会場のひとつになり島の各地にはアート作品が展示されてる。産業廃棄物のその後を知りたい、アート作品を見たい、島の集落を走ってみたい。これが今回の動機。
当日朝、高松港は晴れていたが風が強かった。高松港から直島経由で豊島に行く高速船に乗った。
右側の船
定員７０名の小型だ。これまでのフェリーとは大きく異なる。出港すると風で波が高くなりそれを無視するかのように高速艇はどんどんスピードを上げて進む。船はびしょ濡れになって波がひっきりなしに窓に打ち寄せ、大きくジャンプしたり、左右に傾いたり。しっかりと前の椅子の背もたれを掴んでいないと姿勢を維持できないほどだ。
直島まで３０分、そこから豊島まで２０分の緊張した船旅だった。そして穏やかな豊島の家浦港。
乗客は迎えに来た車でどこかに行ったりバス停まで歩いたりしてあっという間にいなくなった。私は走る準備をして港から海沿いの道路を右回りに進んだ。どの家も落ち着いた瓦の屋根。どっしりとしている。
地図でアート作品がある場所を目指していくが半分くらいは冬季休業中で見られなかった。
錆びているがこれもアート作品。西洋人の女性が何かを感じようとしていた。
唐櫃地区にはいるとこれもアート作品になっているカフェ（島キッチン）があった。
一般的に瀬戸内の島々はヨーロッパ人観光客が多い。この瀬戸内国際芸術祭を評価したのがヨーロッパとのことのようだ。中国人は少ない。
海の方に向かうと再生中の棚田があった。長いあいだ使われなくなった棚田を再生するプロジェクトが進行中らしい。
そして近くの豊島美術館に入った。
ここは中が空洞になっているドーム型の建物。天井にはぽっかりと大きな穴が２つ。外ののどかな里山の風景が目に入る。そして中は中央に向けて少しだけ傾斜がついている。
ドームの床のところどころに水玉があり。吹いてくる風の力でその水玉が時々まるで生き物のように滑り出す。新しい傘の上に雨が降ってその水玉が傘の上を転がるように途中で他の水玉とくっついて大きくなる。その水玉は細長くなりヘビかミミズのようにくねくねと曲がりながら中央の窪地まで移動する。こんな光景が広いコンクリートの底のアチラコチラに見られる。不思議な光景だ。鑑賞者はその水玉を踏まないように静かに注意深く移動して何かを感じることになる。
何を感じるか。私は何も感じなかった。ただただこの建物を作った職人に敬意を感じた。
「心臓音のアーカイブ」というこれもアート作品になっている建物に行ってみた。海岸にあるおしゃれな建物。ここには世界各地の人間の心臓の鼓動音を録音してそれを客がヘッドセットで聞くことができるようになっている。１５４０円也で自分の心臓の音を録音することができそうすることでいつでもこうした施設で自分の心臓音を聞くことができるということらしい。すでに６万人の方が登録しているとか。私にはその意味がわからず単に他人の心臓音を聞くだけで出てきた。
少し進むと首なし地蔵。
島を一周する途中にアートを見たり里山を走ったり。島は外の風景が次々と変わってくる。特に瀬戸内は周囲に多くの小島があるので楽しい。
４時間かけて島を一周。寄り道しながら２０Kmで家浦地区に戻った。ここにもアートがあり横尾忠則がプロデュースした豊島横尾館に入ってみた。横尾ワールド全開で原色を使った日本庭園。空き家を利用したアート作品の展示。。。。度肝を抜かれた作品が並んでいた。内部の写真撮影はできないのが残念。
この家もアートだが冬季休業中だった。
好きな路地裏もたくさんありたのしい。
帰りも同じ高速船で高松港に。風が弱くなったせいかあまり揺れなかった。高松についてから買い出しをして例によって明るいうちから部屋飲み。充実感がある一日だった。