沢木耕太郎「深夜特急」

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昨年12月にミャンマー、カンボジアを旅して予定した帰国日が近づくに連れてこの国を離れるのがさみしくなり去るのを惜しむように行動がゆっくりと丁寧になったような気がした。この本を読んでいて終わりに近づくにつれてそれと同じような感覚を覚えた。それまではさらっと読んでいたが最後はじっくりとゆっくりと読んでいる自分がいた。

この旅の間にSNSにいろいろな写真を投稿したら多くのかたから「深夜特急」みたいだ、とのコメントがあった。この本は知らなかったので帰国してから図書館で借りて読み始めた。

筆者が若い頃1970代と思われる頃に香港をかわきりにタイ、シンガポール、インド、パキスタン、トルコ、ギリシャ、フランス、スペイン、ポルトガル、そして最後はイギリスまでバスだけで貧乏旅行した時の経験をベースに書かれている。今回のミャンマー、カンボジアの旅は彼の旅とは比較にならないほど短い旅だったが同じような体験をしたことから、彼の旅行先での生活、現地の人との交わり、食事、宿のことなど一つ一つに彼が体験してきたその情景が鮮やかに浮かんできた。

旅の中に引き込まれた。彼の旅を追いかけて体験したような気がする。

これはあくまでも小説であり実体験そのものとは思えない。何しろあまりにも現地の人達との出会いが劇的すぎる。私の場合はあれほどの出会いは無かった。それにしても私の場合よりも多くの出会いがあったことは想像できる。それは彼の旅がすべて現地で決めた内容だからサプライズが多かった。私は帰国する日まで宿泊先、そこまでの移動手段は予め決めてあり予約もしていた。この意味で現地でとまどうことは無かった。限られた期間の旅だったのでこうするしかなかった。対して、彼は終わりのスケジュールが決まっていない。現地で情報収集し、その場で計画をしていた。その土地が気に入ればそこに長逗留できた。なんとも羨ましい旅だ。時間と体力があればやってみたいものだ。

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