「燃えよ剣」司馬遼太郎

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「お雪。
横浜で死んだ。
それ以外はわからない。明治15年の青葉のころ函館の称名寺に歳三の供養料をおさめて立ち去った小柄な婦人がある。・・・・婦人はしみとおるような微笑を浮かべた。が、何も言わなかった。お雪であろう。・・・」

お雪は新選組の土方歳三が唯一思いを寄せた女性だ。「燃えよ剣」の末尾の文章。ところがこのお雪さんという方は実在してないという説がある。なんとも印象的な終わりなので実在していたと思ったがそうでもないらしい。こうした創作と史実が混在しているのが歴史小説の面白いところだ。

残された資料を調べて忠実に小説に再現している部分と創作の部分の境の見極めは素人にはわからない。分かる必要がない。

物語は新選組が組織され京都守護職からの依頼で京都に移り池田屋事件を起こし鳥羽伏見の戦いの後に江戸に戻り甲府城襲撃に失敗。政府軍に追われるように東北、北海道に移動し最後は榎本武揚とともに函館で官軍と戦いそこでついに堕ちる。その間に新選組は組織が大きくなると仲間割れが起こりその都度仲間は減っていく。戦いで亡くなるもの以外に新選組としての思想の違いや些細な過ちで斬首されたり闇討ちにあったり自害を強要されたりして消えていく仲間が多い。なんとも凄惨で人間の命が軽んじられている世界だ。

そんな死と直面した毎日を送ってきた土方歳三にも思いを寄せる女性がいた。お雪。それまでに、夜這い、飯盛女、との交情もあったがお雪に対しては物静かな田舎人丸出しの初な付き合いだった。死ぬ直前には函館で会う機会があった。この辺は創作のような感じがするがお雪は実在したらしい。

新選組の近藤勇、土方歳三、そして沖田総司は現在の多摩市近辺の出身だ。新選組が産まれるまでは日野、豊田、八王子などの馴染みのある地名が登場してくるので親しみを覚えた。府中の大國魂神社のくらやみ祭でのエピソードも登場した。

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